キーウィのことをもっと知ってもらうために


 キーウィはニュージーランドの国鳥です。天王寺動物園での飼育は、1970年に大阪万博の記念として雄雌各1羽ずつをニュージーランド政府から贈られたのが始まりです。

 キーウィの分類ですが、文献によって異なりますが4種に分類されます。当園で飼育しているキーウィはキタジマキーウィといい、ニュージーランドの北島に生息しています。体重は雄が約2.2kg  雌が約2.8kgです。南島にはミナミジマキーウィが生息していて、体重はキタジマキーウィと同じくらいです。また、オオマダラキーウィは南島の南アルプス、ウエストコースト北部の山岳地域に生息していて、体重は雄が約2.4kg、雌は約3.3kgです。コマダラキーウィは、キーウィの中では一番体格が小さく、体重は、雌で約1.3kgです。人間が持ち込んだ肉食獣によって捕食されたため、キーウィの中でも最も絶滅の危機に瀕(ひん)している種です。オークランドの沖合いの7つの島々のごく一部にしか生息していません。

 キタジマキーウィの特徴は、絶滅危惧種で個体数は減少傾向にあり、IUCN(国際自然保護連合)レッドリストはEN(絶滅危惧ⅠB類)分類されています。夜行性で翼は退化して飛べません。えさは、ミミズや昆虫の幼虫、果物等で、長いくちばしの先端に鼻の穴があり土の中にくちばしを突き刺して鋭い嗅覚(きゅうかく)でミミズや昆虫の幼虫を探し当てることができます。なきごえは雄が繁殖期に「キーウィ」と口笛のような大きな声で鳴くことが種名の由来です。産卵は雌の体重の4分の1程度もある非常に大きな卵を産みます。これは鳥類の中では体重比では最大の卵を産みます。寿命は、野生では20年を超え、飼育下では40年が限度と報告されています。

 天王寺動物園では、1970年の飼育開始から現在に至るまでに合計7羽のキタジマキーウィを飼育してきました。現在1ペアを飼育しており、雌は愛称がプクヌイで、1988年にニュージーランドのレインボウスプリングスで孵化、1991年に2歳8カ月で入園し、飼育期間は26年2カ月です。雄は愛称がジュンで、1982年にニュージーランドのオトロハンガ動物学協会で孵化し、孵化後約半年で入園しています。現在までの飼育期間は32年11カ月で野生下での寿命より12年も長生きしています。

 

雌のプクヌイ(左)と雄のジュン(右)

雌のプクヌイ(左)と雄のジュン(右)

 

 キーウィの飼育展示場は園内の夜行性動物舎の一番奥にあります。室内は空調設備によって年間平均25℃、湿度50~60%で維持し、日照時間はタイマーによって平均12時間前後に設定しています(春秋12時間、夏14時間、冬10時間)。業者から納品されたシマミミズを生きた状態で採餌(さいじ)できるように腐葉土を敷いています。

展示室全景

展示室全景

 

 夜行性動物舎内はカメラのフラッシュやビデオのライトによる撮影禁止としていますが、間違ってフラッシュをたく来園者もおられます。また、残念なことですが動いていないとガラスを叩いたりする来園者もおられます。キーウィは非常にストレスに弱い動物ですので、倒木や巣箱を置いてストレスを感じるときには隠れることが出来るようにしています。日の当たるバックヤードがないため導入時より太陽光が遮断された室内でずっと飼育しています。

 雌のプクヌイは、2010年10月に削痩(さくそう)、歩様蹌踉(ほようそうろう)を呈し、嗜好性(しこうせい)にも変化が生じたので、治療のため、バックヤードの部屋に移しました。飼育環境は雄と同様ですが、もともと繁殖時に育雛(いくすう)するための部屋で、来園者によるストレスもなく落ち着ける環境になっています。

 飼料は脂肪分の少ない牛の心臓肉をミミズに似せて細切りにしたものにビタミン、ミネラル、カルシウムなどを混ぜたサプリメントを添加し、植物性のオートミールをお湯でふやかしたものをまぶし与えています。

 

人工飼料の材料

人工飼料の材料

完成した人工飼料

完成した人工飼料

 また、養殖のシマミミズを10日に1回3kg業者から購入しています。しかし、雌のプクヌイはしまミミズを食べなくなったので、園内で採集したフトミミズを給餌(きゅうじ)してみると、すごい勢いで完食しました。

 

青草を食べるアジアゾウのラニー博子

シマミミズ

フトミミズ

フトミミズ

 その他にもジャンボミルワーム、コオロギ、カナブンの幼虫なども給餌(きゅうじ)しています。

 雌の強制給餌(きゅうじ)は、現在は体調が落ち着いていて行っていませんが、水、キャットフード、カルシウム、ビタミンなどを混ぜた流動食を1日1~2回、1回約20~30mlを飼育員が保定して、獣医師が嘴(くちばし)からカテーテルを突っ込み、えさを直接胃に入れていました。そうすることにより採餌量(さいじりょう)が、少なくても体重を維持することができました。

 当園が唯一の国内飼育施設ですが、飼育個体が高齢化している事、海外からの導入も困難と思われることから、今後、国内で飼育を継続する事も困難と思われますが、現在の雌の体調が良くなって落ち着けば、繁殖にもチャレンジしたいと思っています。

 

(辻本 英樹)